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任天堂がパルワールドを提訴した特許について、拒絶理由通知が出される事に

 ゲームをプレイする上で様々な技術やシステムが使われる事は多く、それらについては明確な特許が存在する。スーパーファミコン時代の1991年に発売されたFinal Fantasy IV(FF4)に実装され、以後シリーズの特徴となる戦闘システム「アクティブタイムバトル」は、その仕組みが特許第2794230号として権利化されている。またアクションゲームにはつきもの要素として挙げられる「ゲーム空間を鳥瞰図として表示する場合、プレーヤキャラクタの姿や視界の範囲をこのゲーム空間を区切る壁や床の存在にかかわらずモニタ上に表示する」特許第2902352号という特許も存在する。これはプレイヤーの背後に壁があった場合、プレイヤーを半透明化させて表示させるといった処理に対して適用されるものだ。

 こういった特許はゲームを構築する上で侵害しないように調整され、権利保持者が特許権を行使する事がないように配慮がなされる物である。しかし今回の任天堂対パルワールドの動きについては、まだ落ち着きを見せていないようだ。任天堂が訴える特許出願に対して、拒絶理由通知が出されたのだ。

拒絶理由通知と今後の展開

 今回拒絶理由通知が出されたのは、2024年3月に提出された特許出願2024-031879である。特許7505852を親特許とする分割出願をされたものであるが、親特許となる特許7505852は『フィールド上キャラクターに照準で狙いを定めて捕獲アイテムを投擲し捕獲の成功判定をおこなったうえで捕獲する「第1のモード」、および照準で狙いを定めて戦闘キャラクターを投擲して戦闘開始する「第2のモード」を備えたゲームプログラム等に関する特許』とされている。

 これは簡単に言えば仮想空間上で構成された奥行きを含むフィールド上にて、プレイヤーは移動可能な照準を用いる事になる。この照準を合わせた上で捕獲を行うモードと、プレイヤーが使役可能な戦闘可能キャラクターが展開された際に戦闘行為を行う処理を取るモードが備えられたプログラムが対象となる。

 今回出願された特許出願2024-031879は、そこから更に「捕獲のための難易度を低下させたり、対象の行動を制限したりするためのアイテム」というより広範な要素を含むものが対象とされている。これについて、今回拒絶理由通知が出されたのである。

 その理由として挙げられたタイトルは、恐竜を捕獲・使役・飼育するタイプのシミュレーションゲーム「ARK」である。これはポッドから恐竜を出現させ戦闘を行わせるシステムを有すると共に、行動を麻痺させるアイテムと弓の使い方を参照した上で、麻痺させる矢による昏倒値を上げて相手を麻痺させるといった処理について引用がなされている。これ自体がARKの要素の一つであり、今回挙げられた拒絶理由「当業者であれば容易に想到し得たこと」「当業者であれば適宜なし得ることであり、その際、敵キャラクタとの戦闘中に所定のアイテムを使用することで当該ゲージの減少量を相対的に大きくするよう構成するこ

とは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項に過ぎない。」の示す所となっている。つまるところ、今回の提案に対しては「ゲームクリエイターであればそれは思いついても当然の要素である」という普遍性を取った形となっている。

 しかしこの拒絶理由通知については、これが出たから係争が終わるというものではない。あくまでこれは多くの係争で通過する1要素であり、特許に対しての「却下」や「拒絶査定」といった、特許そのものを無効化するものではないからだ。これを元に任天堂側は再検討を行い、新たなリアクションを見せる可能性は大いにあると見て良いだろう。

他のゲームでも発生する特許を巡る争いとゲームの行方

 過去にもこういった事例が無い訳ではなく、ソーシャルゲームで言うならば「ウマ娘プリティーダービー」のシステムが、「実況パワフルプロ野球」シリーズの育成システムと酷似しているということで、Cygamesをコナミが訴えたケースは有名だろう。これに関してはCygames側が育成システムプレイ時に発生するランダムイベントについての特許6727505に関して無効審判を行っており、審決の予告という「審判内容をほぼ確定させる」告知が出されている。

 そして特許を巡ってゲーム会社各社が争い合う不毛な話に終止するのかと言えば、そうでもない。例えば、カプコンはバンダイナムコエンターテインメントと特許クロスライセンスを締結し、株式会社コロプラとも特許クロスライセンスを締結している。これにより締結している範囲で両社が抱えている特許を横断的に利用する事が可能となり、より良いゲーム体験を提供できる事になる。もちろんお互いに特許に抵触せずゲームを製作するという姿勢を持った上で、クロスライセンスというセーフティーネットが用意されているという形態が望ましいだろう。可能であれば、パテントプールのような「合法的な特許の共同利用」を積極的に行う土壌が出来るとまた違った様相になるのではないだろうか。

 ゲームの多様性を守る為にどの様な特許のあり方が必要であり、ゲームの発展を阻害せずに運用する事が可能なのか。消費者たるユーザーがそっぽを向く様な結末だけは、避けてほしいものである。

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尾崎 信也
1986年神奈川生まれ。ゲームニュースエディター。国内ニュースメディア複数社での記者・編集者を経験後、独立。ビデオゲーム業界の最新動向をメインに、ニッチな情報を含む幅広いトピックについて配信。