五輪の旗

オリンピック・eスポーツ・ゲームズの開催中止に、ビデオゲームがオリンピック競技として認められず

 eスポーツを中核としたゲームについての立ち位置を論じる手段の一つとして、いの一番に出てくるのは「社会的にどう見られるか」という立ち位置である。ストリートスポーツの一つであったスケートボードやブレイキンなどは、オリンピック種目となり日の目を見る事で社会的に「やらせても良いのではないか」という認知が広まった事は有名だろう。

 そういった中でビデオゲームの先行きはかなり困難な状況となりそうだ。2025年10月30日、国際オリンピック委員会(IOC)は2027年にサウジアラビアで開催予定だった「オリンピック・eスポーツ・ゲームズ」を中止することを発表したと共同通信が報じている。これはIOCの公式ページ上で発表されたものであり、「IOC Statement on the Olympic Esports Games」として詳細な内容が記載されている。

 それによれば、これまでIOCとサウジアラビアオリンピック・パラリンピック委員会(SOPC)は、2024年に発表されたパートナーシップに基づいて昨年協議を重ねてきたという。今回、IOCとSOPCは2027年の開催に向けてeスポーツワールドカップ財団(EWC財団)と協議したものの、開催を予定していたOEGに関する協力が終了することに至ったという。それと同時に、両当事者はそれぞれ独自のeスポーツの野望を追求することを約束しているとの事だ。

 該当ページによれば「IOCは、『一時停止と再考』プロセスからのフィードバックを考慮に入れ、オリンピックeスポーツ大会に対する新たなアプローチを開発し、新たなパートナーシップモデルを追求する。」「初開催を可能な限り早期に実現することを目標とする。オリンピック運動の関係者およびeスポーツコミュニティから寄せられた圧倒的なフィードバックは、この構想に対する強い要望と相当な支持が存在することを示している。」としている為、このムーブメントそのものが下火になった訳では無いと見て取れる。

 いずれにせよ今回の発表により、サウジアラビア側とIOC側で定期開催を予定していた12年間の契約も解除となり、文字通り一からの再構築を目指す形となった。LoL/ロケットリーグ/SF6/鉄拳/NBA2K/FIFAなどが候補として挙げられるタイトルとなっており、いずれもプレイ人数が多く、対戦コンテンツを有するタイトルとして認知度が高いものが揃っている。

暗中模索の反応

 しかし今回の中止に対する決定の理由については、該当ページでの公開が行われていない。そもそも本イベントは2024年7月にパリで開催された第142回IOC総会でSOPCとの合意が行われ、全会一致のもと可決された背景を持つ。特にビデオゲーム熱が高まる中東においての大イベントとなる事が予想されており、IOC側も専用のページを作る程度に期待を寄せていたはずである。

 また、10月7日には株式会社セガ(以下 セガ)は、国際オリンピック委員会(以下 IOC)と、セガの世界的な人気ゲームキャラクターである「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の公式ライセンス商品の展開に向けて、複数年にわたるライセンス契約を締結したことが通知されている。本契約の締結により、セガはIOCと協業し、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」における「ファイブ・リングス」コラボレーションを展開するとの内容である。このたび、契約の締結を記念し、コラボレーションビジュアル第1弾を公開しました。セガとIOCが2026年を予定するフルコレクションの発売に向けたビジネスパートナーを募集すると銘打った矢先の出来事である。公式からイメージビジュアルが出された後の対応としては、業界に冷や水を浴びせるものだ。

 中東ではeスポーツ事業が盛んであるのは様々なメディアが報じているだけに、IOCとSOPCの間にEWC財団が仲介する形となった今年の協議については疑問の声が上がっている。今回IOCとSOPCが合意する形で開催を取りやめている為、EWCも含めた三者で協議した内容の中身が焦点ではないかと思われるためだ。

 ネット上でも様々な意見が飛び交っている状況だ。オリンピック種目として「スポーツ」という面から定義すると、FPSタイトルを「射撃競技」扱いとするカテゴライズの歪さが浮き彫りになるのではという意見がある。また、12年の継続開催となればタイトルアップデートに伴うゲームバランスの変化が起き、競技の結果自体に普遍的な公平性が出ないのではないかという意見も出ている。もちろん、既にEWCが存在する以上は敢えてIOCと組んで「オリンピックとしてやる」必要性は本来無かったのではとの声すらある。理由が未公開である以上、不安の声が高まるのは明らかだ。

 いずれにせよ、オリンピックの種目であるとして認められる事でeスポーツ、ひいてはビデオゲーム全体の社会的認知に変化が起きると期待されていた動きが停滞する事は、今後の業界のあり方に影を落とす事になるだろう。

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尾崎 信也
1986年神奈川生まれ。ゲームニュースエディター。国内ニュースメディア複数社での記者・編集者を経験後、独立。ビデオゲーム業界の最新動向をメインに、ニッチな情報を含む幅広いトピックについて配信。