世の中に色々なゲームが溢れてはや幾星霜という状況であるが、最近取り沙汰されるゲームにおいて重要な要素の一つが「どういったシチュエーションや事前の用意をすれば、十分にゲームを楽しめるようになるのか」という点だ。リラックスしながらプレイするタイプの作品もあれば、緊張感をもって勝負に挑むようなタイトルなどその最適なプレイ環境は様々だ。そんな中で今回取り上げるタイトル、株式会社ディースリー・パブリッシャーで株式会社ユークス製作の「ゼンシンマシンガール」は、一言で表すならば「お酒を飲むような状況で頭を空っぽにしながら出来るゲーム」といっていい。
- メタ要素とブラックジョーク満載のストーリー
- シンプルかつ効率的なハックアンドスラッシュ
- 頭を空っぽにして出来るシナリオのゲーム
- 長所と短所
メタ要素とブラックジョーク満載のストーリー
ゼンシンマシンガールの舞台は日本、といっても現代令和の日本ではない。舞台は昭和164年の「大日本合衆国」。この時代の日本は24時間365日不眠不休で働けるサイボーグのボディを強烈に国策として推し進め、その結果世界最大の産業大国かつ「残業大国」となってしまっている。そんな中で大日本合衆国最大手の企業「メターナルジョブズ」社は、社長である富国キョウヘイが新製品の「Endroid」というデバイスを大々的に発表。全世界100億台を売りさばき、労働力の再発明を行うと謳っている。


この映像を見た特別製サイボーグこと「マシンガール」である「荒吐リョウコ」と「南麻布アケミ」。仲の良い二人はともに父親がメターナルジョブズ社の社員かつ同僚関係であったが、Endroid発表前に父親両名が失踪。怒りに燃える二人はメターナルジョブズのビルへ突撃するが、ここで操作するキャラクターを選択する事になる。選ばれなかった側はエントランスに居たサイボーグ「1本木8太郎」の攻撃を被弾してしまい、そちらをエントランスに残したまま本社内へ突撃する事になる。
社内は働きすぎて判断機能を含む脳機能の大部分がおかしくなってしまった「ワーキングデッド」と呼ばれるサイボーグが大量に闊歩しており、様々な武装でもってマシンガールを迎え撃ってくる。早い段階から蜘蛛型ボディに下半身を換装したサイボーグや、肩書持ちの文字通り肩や全身が大きい社員が出てくるなど、サイボーグであることをいかんなく発揮したボディでマシンガールを苦しめる。さらに一角では「48時間働けますか?」を売り文句にした栄養ドリンク「SBZ(ストロング・ブレイン・ゾーン)」を飲んだ社員が襲いかかる直前で自爆してくるなど、この時点で大変ブラックな社風である事が見え隠れする。


また各階層は1階ずつ上がる事になるが、通路にはセキュリティとしてレーザートラップなどの妨害要素も満載。退社についての都合を考えてもいない要素をなんとかいなしつつ、1本木8太郎が待ち受ける5階へ到着。そこで待ち構えていたタレットに蜂の巣にされ、マシンガールはあえなくダウンしてしまう。
次に起き上がったのは、彼女達をサイボーグへと改造した権威「葉加瀬博士」のラボ。やや目つきや顔つきの怪しい人物ではあるが、サイボーグ研究の第一人者だけあってこの時点からメターナルジョブズ社内で手に入れた素材を元に、キャラクターの強化改造が行えるようになる。
再度メターナルジョブズ社へ突撃し、10階に居る管理者「←逆十字トモヨ」と対面。マシンガールを「シンニュー社員(新入社員)」と勘違いした彼女は、その性根を叩き直すべく自慢のグリフォン型のボディを利用し攻撃を仕掛けてくる。高速機動を活かした攻撃をかいくぐり、弱点である乾電池を狙い撃ちにし、見事「退職(リタイアメント)ブロー」をかます事で撃破完了。彼女の能力を解析したいという葉加瀬博士のアドバイスで一旦会社から帰還し、特殊能力「オーバークロック」を装備したマシンガールは再出撃に備えるのであった。
シンプルかつ効率的なハックアンドスラッシュ
本作の最大の特徴は、シンプルにまとめられたハックアンドスラッシュ要素だ。マシンガールは射撃武装と格闘武装を一つずつ装備しているが、これらは永久に使い続けられる訳では無い。各階層のフロアにある部屋で敵を全滅させるたびにアイテムボックスが最低一つ発生し開封、その中身が別の武器であったり強化パーツである「MOD」であったりするのだ。武器タイプは射撃武器としてガトリングガン系統、ライフル/チャージライフル系統、ショットガン系統、ランチャー系統が用意されており、近接武器はブレード系統、チェーンソー系統、アックス系統の3種類が用意されている。この他にシールドを強化する「スクトゥム」と、先述のMOD、体力回復要素であるバッテリーがランダム抽選されるというものだ。

装備にはレアリティも存在し、コモンから順にアンコモン、レア、レジェンダリー、ユニークの順に基礎性能が強力になると共に、装備に付属する「オプション」の個数が増えていく。大半のハックアンドスラッシュ系タイトルと違い、本作品は「HP」「EN」「PP」を伸ばすビルドが有利となっており、多少使いにくい武器でもこれを優先して付けていく事が推奨される。またMODも、階層移動時に体力やPPを回復・蓄積するMODが存在する。このうちPPは、マシンガールに搭載できる遠距離/近距離向け必殺技「成敗(パニッシュメント)ムーブ」発動と、先述したオーバークロックの発動に必要なエネルギーである。
武器が強力ならマシンガールは無敵なのでは?と思うかもしれないが、そうもいかない。敵自体が物量で攻めてくると共に、タレットや肩書持ち社員、特定階以上から出てくるエリート雑魚の「黒服」といった厄介な相手、フロアに敷き詰められたトラップ、何よりボスクラスのネームド社員は一筋縄では行かない相手だ。十分に装備やMODを吟味しながらフロアを突破しなくてはいけないが、自分の体力や装備の状況と相談をしながら行う必要がある。これこそがゼンシンマシンガールの難易度の妙味である。
もちろん階層を上がるごとに敵も強力になっていく。特に86F以上の高層階では敵の攻撃も十分に苛烈な状況であり、的確な強化とリスク管理が必須となってくる。そういった意味では歯ごたえもしっかりある作りと言えるだろう。やられてしまっても、素材は一部、強化によっては全部持ち帰れるので心配はいらない。また1Fからのんびり登り直しながら、ワーキングデッド達をボッコボコにしてやるのである。
頭を空っぽにして出来るシナリオのゲーム
題材自体が「女子高生がブラック企業に乗り込む痛快復讐劇」という人を選ぶジャンルではあるが、筆者の肌感としてはむしろ往年のTPSタイトル「ガングレイヴ」に近しい物を感じる程に、何でも壊せて何でも撃てる、割と場合によっては難易度が高いタイプのアクション作品という印象を受ける同作。幹部社員も非常にユニークな顔ぶれが揃っており、先述した←逆十字トモヨは「Endroid販売促進室 係長」の肩書だ。Endroidの売上台数は一人で7000万台を売り上げるほどの営業のやり手だ。その一方で典型的なパワハラ気質の脳筋社員でもあり、自身の小さいボディがコンプレックスであった所に高性能な大型ボディへと乗り換えが実現したというバックグラウンドがある。

全階層100階で再挑戦時はエレベーターキーを使わない限り1Fからの登り直しなら、ボス戦は退屈にならないのか?という疑問もあるだろう。だがフロアの長であるネームド社員達は特定の回数挑む際に新たな要素が発生する。それが社員の「降格人事」である。例えば先程の←逆十字トモヨは最初こそ「係長」であるが、3回目の戦闘時はなんと「主任」、5回目の戦闘時には「主任補佐」にまでランクダウン。主任が部署に居ないのに主任補佐として任命されてしまっている事に発狂しかけてしまうなど、敵側もコミカルかつブラックなユーモアがふんだんに散りばめられている。もちろん遠慮なく存分に退職ムーブをぶちかましてあげよう。


このゲームに対して唯一欠点があるとすれば、それは1周のプレイ時間の長さだ。このゲームは1Fから順々に登っていくが、途中で「中断」し、タイトル画面へ戻る事は出来る。ただし次にスタートする際はその中断地点からであり、例えばインターバルのように強化を挟んだりする事は出来ない。また高層階であれば敵の集団やトラップなどの対処に時間も取られるため、必然的に上に行けば行くほど1フロアの突破時間は長くなるのだ。そしてエレベーターキーで一定階層からスタート出来るものの、入手経路は大体その階層のネームド社員であるボスしか落とさない為、エレベーターキーを使った後でやられてしまったらまた登り直しになるというプレッシャーは常に感じる所であった。
筆者は一度10Fからスタートし100Fでの完全クリアを果たしたが、手持ちの強化要素をほぼ使い切って4時間41分のプレイ時間となった。流石にこれは長いというレベルを超えており、集中力が切れながらのラストバトルは正直な所「まだ敵が来るの…!?」という程であった。こればかりはシステム上仕方ないとはいえ、特定階層からスタートできるエレベーターキーの入手頻度を上げてもらいたい所である。
なお一度クリアしたら解放される要素として、別のマシンガールでもプレイできる「ムゲンモード」や、強くてニューゲームに相当する「ニューゲーム+」という物にトライ出来る。後者では最初に選んだマシンガールとは別のマシンガールを選ぶ事で、それぞれ会話で違った反応が見られるのが魅力だ。筆者のオススメとしては、初回プレイは正義と熱血要素を持つ荒吐リョウコ、ニューゲーム+ではクールで沈着冷静がモットーな南麻布アケミを推したい所である。特にリョウコはやたら前向きなJKである為、そこまで長時間プレイが苦にならない印象を受けた。
果たして社畜を打倒し、頂上に構える悪徳社長を打ち取る事が出来るのか!?「ゼンシンマシンガール」は現在Steamなどで好評配信・発売中である。是非会社をフルブレイクしてみたいあなたにオススメの一本だ。
長所と短所
長所
・お手軽なアクションで会社をめちゃくちゃに出来て、奥の深いハクスラ要素が楽しめる
・外連味あふれるブラックユーモアがいたるところに敷き詰められている
・プレイヤーキャラクターも明るく可愛らしいが、ストーリーの背景事情は後ろ暗い
短所
・武器種がやや少なめで、アクション自体は種類が多い訳では無い
・一部の武器は使いにくさが目立つ
・トラップ満載の通路はアクション作品の操作の上手さを要求される為、苦手な人には厳しい
最終更新日: 2025年12月3日 14:44