Skyrimのナゼームの画像

Skyrimのナゼームが歌って踊りだすModが話題に 14年経っても擦られ続ける愛される憎まれキャラの妙味

 PCゲームにはMODがつきもの、といっても過言ではない。ゲームの内容改変からちょっとした小物の追加まで、様々なオーダーに応えてくれるゲーム外の改造プログラムは、今やコンシューマ版に逆輸入される形で市民権を得つつある。

 そしてMODに対して積極的な推進を行っているのがベセスダ・ソフトワークスのゲームだ。特にThe Elder Scrolls Ⅳ:Oblivion以降、同社のゲームでMODを知ったプレイヤーは多いと思われる。さてそんな同社のタイトルの一つ、「The Elder Scrolls Ⅴ:Skyrim」。2026年1月20日、実に発売から14年以上経つこのタイトルに一つのMODが導入された。同作に登場するNPC「ナゼーム」がなんと歌を歌って更には踊るという良くわからないMODである。これについて、同NPCの事情も含めて少々深堀りを行ってみよう。

ナゼームという男

 Skyrimの舞台となるのは、タムリエル大陸北方の地「スカイリム」。前作Ⅳの舞台である中心領域のシロディールとは北部の都市、ブルーマから先が国境線となっている。このスカイリムの中心地として栄えているのが「ホワイトラン」という城塞都市だ。山岳地からほど近いものの、かなりの広さの平野に聳える街の偉容は、Skyrimをプレイしたらおおよそ最初に出会う街としての風格を十分備えている。

 さてそんなホワイトランには3つの地区が存在する。商人たちが暮らす「平野地区」、市民たちが暮らす「風地区」、そしてドラゴンズリーチという城が建っている政治の中心「蜘蛛地区」にそれぞれ分かれている。Skyrim内の中心都市だけあって多様な人々が存在するが、そのなかの1人がナゼームである。彼は「首長の後ろでたらふく食べてる」と妻と評されており、チルファロウ農場という大規模な農場をホワイトラン近郊に所有している。いわゆるホワイトランにおける政治階級に属している様な、貴族然とした立ち位置の存在だ。

 そして彼と出会うと聞ける第一声は「雲地区には頻繁に行くのか?おっと、馬鹿な質問だった。もちろん行かないに決まってる」というものだ。彼自身が農場を所有しており、妻の評価からも分かる通り、裕福な立場にいることをこれでもかと初対面の相手にアピールしてくるのである。プレイヤーからの評価も「なんか嫌味を言ってくるキャラクター」として定着している。

 しかしここで一つ訂正しよう。定着してはいるのだが、彼の周りの設定などのちぐはぐさやその鬱陶しさから、一周回って「ご近所の面倒くさいいじられおじさんポジション」という変な愛され方をしているのである。

納期や設定に振り回された愛されキャラ

 まず彼はチルファロウ農場を所有しているという話だが、農場の名前と彼の名前は現状一致していない。というのも、ホワイトランには他にも氏族としてバトル・ボーンという一族が暮らしており、こちらはチルファロウ農場近郊の「バトル・ボーン農場」を所有している。またそれが明確に分かるようになっており、更に彼ら氏族は元々仲の良かった「グレイ・メーン」という氏族とホワイトラン内を二分する勢いでいがみ合っている。この対立は、スカイリムの地がシロディール由来の帝国勢力とスカイリム土着のノルド勢力が対立する真っ只中にある事が原因だ。バトル・ボーン側は帝国側として、氏族としての生き方を考えているというきちっとしたバックボーンがある。ところがナゼームには、そういった背景事情に対する言及が一切無いのである。むしろホワイトラン住民からの好感度は真っ逆さまな勢いで低い。

 加えて住居の問題だ。ホワイトランにはノルドの神「タロス」を信仰する熱心な布教者「ヘイムスカー」という人物も居て、彼の説法はある種ミーム化するまでに人気を博している。もちろん彼は一軒家を持っているが、普段は外のテントで寝泊まりをしている。自宅は礼拝堂のような内装となっており、同志を得るため身を粉にして布教に励んでいるのである。ただしく信仰者として説得力のある行動を取っているのだ。ところが、ナゼームとその妻は自宅ではなくホワイトランの宿屋「酔いどれハンツマン」に寝泊まりをしているのである。

 もちろん彼に家がないという訳では無い。ナゼームは「ウィンターサンド邸」という建物の鍵を有している。だがしかし、ゲーム内ではどこを探してもその建物は存在しない。それもそのはずで、Skyrimの納期の関係上、彼らの自宅がゲーム内に配置されていない可能性が高いのである。いわゆる「カットコンテンツ」の一つと言えるだろう。とどのつまり、彼は「家の鍵は持っているが、家は無く嫌味を言ってくる自称金持ち」という何とも微妙な立ち位置に収まってしまっているのだ。

 このポジションに世のMOD製作者が食いつかないわけはなかった。大量のナゼームが敵として出てくるMOD武器として使用できるナゼームが手に入るMOD果ては全てのテクスチャをナゼームで置き換えるMODなど、挙げればきりがない程に愛されている…かどうかは分からないが、注目されている存在となったのだ。なお、ホワイトラン内にきちんとウィンターサンド邸を設置するMODも出ている。良くも悪くも愛され続けた結果と言えるだろう。
 今回のMODはナゼームに大量のセリフを追加し、歌って踊りだす選択肢も与えるというものだ。14年経っても鬱陶しさを感じるという一点だけでここまで扱われるキャラクターはそう居ないものである。是非試してみるのも良いだろうが、くれぐれもMODの導入は自己責任でお願いする。きちんと導入方法などをチェックした上で、行う事を忘れないように。

Author
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尾崎 信也
1986年神奈川生まれ。ゲームニュースエディター。国内ニュースメディア複数社での記者・編集者を経験後、独立。ビデオゲーム業界の最新動向をメインに、ニッチな情報を含む幅広いトピックについて配信。