没入型ソーシャルプラットフォーム「VRChat」を運営するVRChat Inc.(本社:米国、CEO:Graham Gaylor)は、2025年12月17日(水)にベルサール秋葉原で開催する日本初の公式ビジネスカンファレンス『VRChat Japan Business Experience 2025』の最新情報を11月13日に発表している。今回のビジネスカンファレンスには大丸松坂屋百貨店、ソニー、味の素、セイコーエプソン、シャープ、ヤマハ発動機、スクウェア・エニックス・ホールディングス、KDDIテクノロジーなど、50以上の企業や団体がスポンサーとして参画。アドバイザー企業としては株式会社HIKKY、株式会社ポリゴンテーラーコンサルティング、株式会社Gugenka、株式会社往来が名を連ねている。
今回ビジネス向けの大規模なカンファレンスが開催されるという話はだいぶ画期的かつ経路の違う流れとなっている。というのも、これまでこういった場は日本では設けられておらず、VRChatのイベントとなると専らユーザー交流や企業主導の展示イベントといったものが大半であった。今回そういったカラーを廃した企業向けのイベントということもあり、VRChatひいてはメタバース系事業に対し深く食い込んで行きたい企業にとっては必聴のイベントと言えるだろう。
そもそもVRChatとは何か?
VRChatはアメリカ合衆国のVRChat Inc.が運営するソーシャルVRプラットフォームである。2014年1月16日にOculus DK1開発キットに対応したスタンドアロンアプリケーションとしてMicrosoft Windows向けにリリースされ、2017年2月1日にはSteamの早期アクセスプログラムを介してリリースされた経緯を持つ。ソフトウェア自体はかなり前からリリースされているものの、日本においては2017年から2018年に複数のプレイヤーがYoutubeやニコニコ動画などで内容の発信を行い、2018年初頭では数百名の日本人プレイヤーが存在している状況であった。
転機が訪れたのは2018年8月にはVR法人HIKKYが主催する「バーチャルマーケット」の開催である。これは最初、VRChatユーザーたちによる初の展示会イベントとして開催されたものであり、実際にゲーム内で利用可能なアバターやオブジェクトといったデータを展示し、ピクシブ株式会社が運営する総合マーケットプレイス「BOOTH」への販売経路を案内するという構造であった。この頃から、ユーザーがアバターなどのデータを販売する経済的活動の素地が生まれ、認識される様になっていったのである。
第二回目の「バーチャルマーケット2」より、VR法人HIKKYは出展に対しスポンサーとなる企業を募集。エイペックス株式会社やセブン&アイホールディングスとGugenkaやパソコンショップTSUKUMOこと九十九電機といった企業が名乗りを挙げて協賛としてブースを設置。また応募してきたユーザー向けの展示会場も大幅に増加。ここから本格的にVRChat内でデータを販売するという流れが生まれると共に、企業からの広報目的でVRChatを利用する気風が出来始める様になったのだ。
企業が定着する土地となり得るか
その後はバーチャルマーケットの定期開催が行われ、イベントに併せて協賛を行い、自社のコンテンツを宣伝する企業も増えてきている。それと同時に、他の展示会イベントも徐々に開催される様になってきている。日本人プレイヤーの数も徐々に増加傾向となっており、特に若年層を中心にプレイヤー人口が増えつつある状況だ。これに注目した幾つかの企業や団体は自社のコンテンツや製品を展示する事で理解を深めようとワールド(会場)製作に取り掛かる様になる。主な公開先として有名な企業は日産自動車株式会社や京セラ株式会社、自治体としては横須賀市などが中核となって動いている状況である。ただし日本のユーザー数は増えてはいるものの、それが直接的にビジネスに繋がる事はなく、現状は貴重な文化財のモーションデータや景観のスキャニングデータの再現を行ったり、あるいは企業の広報要素であり採算度外視の展示用コンテンツとして活用されている状況となっている。
今回はそれを踏まえての初めてのビジネスカンファレンスである。先述した通りまだまだユーザー主導のコンテンツ(UGC)が非常に多く、取引実績といっても個人では破格の収益を上げるユーザーもいれば、自身の達成感や満足感の為に作品を製作・出展しているユーザーもいる。そもそもそういったクリエイティブな活動を行わず、プレイヤーとして参加しているユーザーも多い。まだまだVRChatは「一般ユーザー主導」の領域である。
とはいえ企業向けのハイクオリティなコンテンツを委託製作しているユーザーや団体も見受けられる状況であり、決してビジネスとしての芽がない状況ではない。また得てして「マニア向け」と語られるVR対応SNSではあるが、北米市場ではQuest2以降のVRHMDが大きく市場を広げており、先日Valveからは待望の新型HMDであるSteam Frameも出ている。主要なユーザー層の多い北米市場を狙っていく戦略を執るという事も考えられる。そして何より日本は北米に次いで第二の公式有料プラン課金額を誇る市場となっている。それだけVRChatの文化が根付きつつある中で、一般化を見越したマーケティング戦略を打つ事もまた考えられる要素だ。
いずれにせよ、この土地でのビジネスがどう展開していくのか。UGC華やかな時代から企業が目立つビジネス向けの領域となり得るのか、今後の展開が楽しみな情勢となっている。
最終更新日: 2025年11月18日 16:19