スマイルゲート・メガポートが自社でサービス中であり、SUPER CREATIVEが開発している新作RPG『カオスゼロナイトメア』(以下、カオゼロ)。10月22日のサービスインより日本でも話題となっており、戦略性の高いバトルや魅力的なキャラクターなどの要素で多くのユーザーを引き付けている。開発元であるSUPER CREATIVEは同じくソーシャルゲームアプリであるアニメRPG「エピックセブン」の開発や、3Dモデルによるキャラクター表現に重きをおいた美ジュアルRPG「アウタープレーン」の運営などにも携わってきた。なお、アウタープレーンはSmilegateサービスからVAGAMES自社サービスに移行され、Major9とパートナーシップを推進していく流れでサービスが継続している。
そんなサービスイン直後のカオゼロにおいて、一つ気になる状況が発生している。日本よりも先んじて先行サービスインしている韓国国内において、シナリオの出来やシステムについて否定的な評価が相次ぎ、いわゆる「炎上」状態となっている。その影響は日本側にも波及しており、いわゆるガチャを引くためのアイテムが定期的に配られるなど運営も対応に追われている状況だ。この不可解にもつれた状況がなぜ発生しているのかについて、追いかけてみる事にする。
ゲームの方向性とシナリオの齟齬
カオゼロでは、プレイヤーは「艦長」という傍観者兼責任者のような立ち位置となっており、彼の下に集う「戦闘員」たちが実際の戦力となる。艦長達は宇宙にある惑星上に発生する領域「カオス」を攻略したり、様々な人員と組織の間を丁々発止の立ち回りをしながら、陰謀が渦巻くシナリオを進めていくゲームだ。本作の特徴としてカオスの領域攻略中は戦闘員に「ストレス値」が溜まる。これが一定値を超えると戦闘員ごとの「トラウマ」が活性化してしまい無力化されてしまうが、これを克服する措置を取る事でより強力な状況で復帰し戦線を押し返すという流れとなっている。また、全員撃破され撤退となってしまった戦闘では戦闘員がトラウマを抱え続けてしまい、艦長はそのケアを行う事になる。このトラウマ活性化の発狂状態をどう克服しながら戦闘と探索を進めていくかが、本作の重要なファクターとなっている。
ここまで書いた段階ではいわゆるSFかつ若干の鬱的要素もある、いわゆる「オーソドックスな」ゲームであるが、今回炎上しているのはそのゲーム設計そのものが後付で行われた可能性が高いというリークによるものなのだ。
リークによれば、元々カオゼロのシナリオは韓国で人気のクトゥルフ小説作家「風邪助(감기도령)」氏を初めとした4人体制で構築されていたものであった。そこに同社開発の別ゲームであるエピックセブンのシナリオスタッフが合流。加えて統括するプロデューサーが作中人物の「レノア」を気に入り、自分のオリジナルキャラクターである「ルイス」を作り出して両キャラをくっつけてしまった、いわゆるカップリングを行ったとの事であった。更に戦闘員の一人「オーウェン」が、艦長そっちのけで周りの女性戦闘員達から好意的に接されるハーレム状態に近いシナリオ展開となるなど、本国版のシナリオはかなり「癖の強い」出来となってしまっていたようである。
またゲームシステムにおいても未公開のスチルとシナリオが存在、こちらも併せて開示される事となった。キャラクターの行動を強化する「ヒラメキ」という要素は現サービス版だと決まった物が選ばれるが、従来はプレイヤーが2つのうち1つの要素を選択できるようになっていた。更に重大なのはゲームの世界観設定そのものであり、初期の世界観PVでは「第16次救出作戦」という繰り返し同じ作戦を行うアナウンスがなされたり、ゲームプレイPVでは謎の強大な存在に一瞬で「花」を咲かせられる描写が存在するなど、「繰り返し強敵と対峙しながら、最終的に生還できるルートを探していく」物語が見えてくる。
そして今回リークされたスチルの中には、戦闘員が青い花に侵食されて任務不可能な状態となってしまったものも幾つか見つかっているのである。これは前述した世界観PVやゲームプレイPVの描写を裏付けるものだ。いわば「コズミックホラー物」をやろうとしていたのだろう。
だが現状サービスインしたものではそういった要素はない。それこそ戦闘のストレスで発狂する要素こそあるが、物理的にも侵食され文字通りの「不能」となる描写は描かれていない。もちろん今後の実装でそういった要素はあるのかもしれないが、そうだとしたらばPVとはあまりに方向性が違うタイトルとなってしまっている。
加えて先述したシナリオ担当については風邪助氏は既にチームを去っており、一説ではブルーアーカイブのシナリオ班に所属していると囁かれている。エピックセブンのシナリオ担当も既に去っており、その時点でガタガタとなっていた物語をサービスインまでに急遽組み直した可能性が高い。
プロデューサーはライブの文字起こし記事の中で「シナリオ作家たちの退社原因も議論の的になっております。昨年、スタジオ内のシナリオチームの大多数が退職したことは事実です。その理由は、私の行き過ぎた介入のためでした。シナリオ作成の最終締め切りまで残り少ない状況下で、焦りを持って直接脚本に参加し、制作を強行したこともまた事実であり、非常に無謀な決定だったと思います。
ご一緒したシナリオ作家の皆様は有能な方々でしたが、私が過度に欲張って介入したことにより、その方々の創意性を抑制してしまいました。そのような環境は残念な結果につながるしかなかったので心が重いです。現在のメインストーリーは時間の不足と制約の中で完成されたものであり、その作業をされた方々も現在は退職された状態です。」と語っている。
明らかに、シナリオの完成に対して大きな問題があったのだろうことは想像に難くないのだ。日本語版については現状キャラクターの立ち位置などに問題点はなく、シナリオの流れとしては自然になっているのがせめてもの救いと言えるだろう。
ソーシャルゲームにおいて、コストを低く抑えてキャラクターの立ち位置を明確化させる最も冴えたやり方は、シナリオを読ませる事だ。多くのゲームがそうしようとし、そして失敗を重ねている。あのFate/Grand Orderですら一部のシナリオについてはかなり強引な要素が強く、評価の低い章が存在する。またスノウブレイクではイベントストーリーがそれまでのメインストーリーと明らかに設定の齟齬を起こした為、イベントの公開を先送りすると共に該当キャラクターの永久欠員という対応を迫られるまでになった。最近ではサービス移管時のアウタープレーンのイベントシナリオが機械翻訳同然の出来であった事なども記憶に新しい。もちろん現在開催中の新規イベントは、追えている範囲ではそういった不自然な翻訳はなされていない。
スキップ機能で飛ばしてしまうからと手を抜くのは、製品の最も大事なところを投げ捨ててしまっているに等しい。どういったゲームでもシナリオがなければその魅力が衰えてしまうのだから、せめて「納得の行く出来」であって欲しいと願うものである。
最終更新日: 2025年11月11日 07:35