PONGからスタートしたビデオゲームは、機器の進化に伴って様々な表現やシステムが実装され、実に多様なラインナップのソフトを生み出している。スーパーマリオシリーズの様な王道アクションゲームから、最後までプレイしてもノリで押し切られてしまう「せがれいじり」の様な奇作、更にはしゃべる!DSお料理ナビなどの生活お役立ちソフトなどという物も出てきており、これだけ見ても「遊ぶだけの領域」ではないことはおわかりだろう。
そんな何の変哲もないゲームをプレイするゲーマーにとって、とんでもないニュースが飛び込んできている。なんとゲームをプレイしていたら逮捕されたという、にわかには信じがたい話だ。
ゲームの表現は犯罪の温床となり得るのか
海外メディアの「VOCE SABIA ANIME」が11月11日に報じた内容によると、日本人制作者による同人ゲーム「奴隷との生活(現タイトルは『傷肌少女との生活』)」をプレイした24歳のノルウェー人男性が逮捕され、懲役3年の判決を受ける可能性があるとの事である。

当同人ゲームは2014年に発売された作品であり、内容としては町医者である主人公が商人から話を持ちかけられる。以前とある主人の奴隷とされていた少女を買い取る事になり、彼女ーシルヴィの頭を撫でたり、衣服を買い与えたり、外出に同伴させるなどの行動で好感度を上げていく。選択肢により彼女が死亡してしまうバッドエンドこそ存在するが、彼女を庇護し育てていくという内容に終始した純愛物の作品である。タイトルから誤解される様な「暴力的な行為」は当ゲームには存在しない。
今回の逮捕に至った背景には、このゲームが米国の組織であるNCMEC(全米行方不明・被搾取児童センター)によって「オンライン犯罪の可能性がある」という報告をされた為である。好感度を高めると性的なシーンがスタートする作品ではあるのだが、これに関してはきちんと成人向けタイトルであるという指定がなされている。だが捜査官のエリック・ホーナ・ハーゲン氏曰く、ノルウェーの法律では、露骨な架空の描写を実際の児童ポルノと同等とみなしているため、たとえアニメーションや絵だけで構成されていても、そのような素材を所持またはダウンロードすると懲役刑につながる可能性があるとの報告がなされているのだ。また同氏は続けて「アジアではアニメーションに関する法律は寛容です。このゲームはいくつかの国では完全に合法です。しかし、ノルウェーでは犯罪とみなされます。ノルウェーではこれが違法コンテンツとみなされていることを理解するのは難しい人もいるかもしれません。」と語っているのである。ただしこの事件、このゲームによって逮捕されたのは事実ではなく、別の画像が理由となっているという情報も出てきており、その真相については情報が錯綜している状態だ。
類似の事例で有名なのは、ソーシャルゲーム「ブラウンダスト2」を巡る逮捕事件だ。RTE(アイルランド放送協会)が8月21日に報じた所によると、ダブリン空港第2ターミナルでアメリカ行きの飛行機に乗る予定であったFinley Bowd氏は、保安検査場で呼び止められ、なんとその場で逮捕されてしまったのである。法廷で提示された情報によると、ボウドは児童性的搾取物に分類されるアニメ画像を保管したとして告発されたのだ。これは現地法で禁止されている行為である。そして彼がスマートフォンにインストールしていたタイトルとその「アニメ画像」が使われているゲームがブラウンダスト2であるというのだ。

ブラウンダスト2はNEOWIZでサービス中のソーシャルゲームであり、最大5人のキャラクターでユニットを組んで、敵と戦闘しストーリーやコンテンツを進めていくRPG作品だ。同作は元々同様のタイトル「ブラウンダスト」の続編ではあるが、そのゲーム性は前作よりもシンプルにまとめられているのと共に、キャラクターのビジュアルにおいても高い評価を得ている。ただし傾向として最近の限定キャラクターで良く見られる傾向として、デザインやスキル使用時に入るカットイン、その他LIVE2Dによるイベントアニメーションなどの表現がだいぶ性的に際どい描写となっており、正統派作品の皮を被った成人向けではないかと後ろ指をさされる程度には過激な表現も多い。画像のキャラクター「レピテア」も明確に少女と描写されるキャラクターの一人である。
この事件についてゲーマー達からは軒並み不満の声が漏れ聞こえた。というのも、この事件を含めゲームやアニメーション、漫画を規制対象とする声は度々上がっているのだが、それを規制あるいは問題視したとしても現地の犯罪率の抑止に何も寄与していないのである。まして「傷肌少女との生活」や「ブラウンダスト2」はリリースされてから日が経っている作品である以上、問題要素が存在するならば即座に顕在化するのが筋であるという主張は最もだ。
キャラクターデザインや表現はゲームの面白さと等価である
こういった事件を見た上で「では表現的に問題が無いとされたゲームは長続きするのか?」という疑問が出るのは当然である。そしてそれに対する明確な答えを我々は既に知っている。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)より発売されたゲームソフト「CONCORD」がそれに当たるのだから。
同作はいわゆるヒーローシュータージャンルに当たる作品であるが、ルール自体は他のタイトルとそこまで代わり映えのしない内容でありながら、「オーバーウォッチ 2」や「APEX Legends」「VALORANT」の様な基本プレイ無料のタイトルではなく39.99ドルの有料タイトルとしてローンチされた。
今も度々話題となるキャラクターデザインについては運動能力が低そうな体型や、平凡過ぎるコスチュームデザインが多々見受けられる。それはヒーローシューターに求められる「ヒーロー性」とは真逆のベクトルだ。またキャラクターシートにプロナウン(代名詞)が書かれていたり、「ボディ・ポジティビティ(Body Positivity、体型の多様性を認めようというあからさまな意図)」が嫌という程に分かる構造となっている。いわば「ポリコレ的に角の立たない要素を詰め込んだパッケージ」がこの作品の肝である。
このDEI(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包括性)にまつわる問題や”Woke”というスラングが昨年以降だいぶ飛び交ってはいるが、結局の所ゲーマーが好むのは「こういうのが『私たちは好きだから』お前達もやれ」という押し付けの姿勢ではなく「こういうのが『あなた達が好きだとわかったので』私たちで作ってみた」という作り手側の情熱と、それが注がれたゲームの放つ魅力である。魅力的なゲームは魅力的なキャラクターや唯一無二のこだわり抜いたシステム、圧巻の演出やストーリーライン、BGM、そういった要素の単独もしくは複合体として語られる。そしてそれを以てゲームや表現は肯定されるのであり、いわば上辺だけを取り繕おうとしてもそれは「ゲームに理解の無い遅れた人間であり団体であり地域であり国家である」と見なされてしまうのだ。CONCORDがサービス開始後、わずか2週間でサービス終了に追い込まれたのはその証左と言ってもいい。
面白いものは面白いのであり、それを無理に縛ろうとすればかならずしわ寄せは来るのである。もちろん過激な表現を無理に子供に見せたり、あるいは苦手なユーザーに強要することは宜しくないものであり、ましてや実際の犯罪につながる様な行為はあってはならない。ゲームはゲームであり現実は現実であるとして、表現のレイヤーを切り分けて考えられる土壌のある地域こそが、将来的なゲーマーの天国として生き残っていくのかもしれない。
最終更新日: 2025年11月13日 16:23