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Bounty Starレビュー:古き良き歯ごたえのあるロボットアクションゲーム

 メカやロボットというと、大体はSFチックであり、そして何かしらの超兵器があったり、あるいはハイスピードアクションがあったりするのは昨今珍しくない。見栄えとしてはそちらの方が良いし、SF的なある種の「清潔感」が強調されるからだ。ロボットを駆るからには強大な軍事組織が必要だったり、あるいはきちんとしたシステムが構築された世界である事もお約束だろう。

 それらすべてを取り払った土臭い、地に足を付けた、熟考しながらプレイするロボットゲームが欲しいユーザーはどこへ行ったら良いのか?その答えの一つとして「Bounty Star」を挙げてみよう。

爽快感ではなく頭脳戦と雰囲気を楽しむ作風

 本作は文明崩壊後に再度人類が復興を始めた地球の、アメリカ合衆国アリゾナ州であった地域が舞台となっている。主人公であるクレメンタイン・マッキニーは二脚のロボット「ラプター」のエリートパイロットかつメカニックであり、地元でささやかに暮らす入植者達を守る自警団組織のリーダーとして戦っていた。しかしある晩に起きた悲惨な出来事から、彼女は「墓場のクレム(Graveyard Clem)」となり、心が掠れきったラプター乗りとしてスタートする。本作で彼女が扱うのは民間用のラプターMkⅡをサルベージしたものとなっており、彼女が最初に乗っていた軍用ラプターよりも癖が強い。

 そんな本作全体の癖の強さを表す要素が「熱」である。プレイヤーの駆るラプターMkⅡには熱量が設定されており、ダッシュや攻撃などのあらゆる行動や周囲の時間帯で熱に与える影響が変わってくるのだ。高熱を発する武器とジェットダッシュを焦熱の昼間に使えばあっという間にオーバーヒートするし、冷却効果を持つ武器やクライオダッシュを冷える夜間に使うと同じく冷えすぎてフリーズしてしまう。武器や装備、環境によって左右される熱をいかに管理しながら戦っていくかは、このゲームの肝といっても過言ではない。

 だが温度がオーバーヒートより少々低い段階では近接武器の攻撃速度が上がり、逆にフリーズする温度より少々高い段階では射撃武器の連射性能が極端に上がる。これを活かしてハイレートで攻撃し続けるピーキーな運用をすることも可能ではあるのだ。ただしその状態で加熱や冷却に傾きすぎる運用をすれば、たちまち温度が上がりすぎて劣勢に追い込まれるだろう。


 またこのゲームは敵によって装甲の種類が決まっており、この装甲の種類に対して有効となる属性の攻撃を当てる事で効果的に体力を削る事が出来る。そのため排熱に注意しつつ、効果的な武装を選択し、最適な位置取りで攻撃を繰り出しながら戦闘をするというのがこのゲームの特徴だ。とはいえこのゲームは弾薬費や燃料費の概念があるため、無駄弾を撃ったり動きすぎたりするのは悪手だ。

 ここまで見てわかるだろうが、このゲームはプレイヤー側が一方的に有利な立場で戦闘を行ったり、高速機動で敵を蹂躙したり、あるいはライバル機と切磋琢磨するような「ロボゲーのお約束」が存在しない。雑魚と侮った相手でも囲まれればこちらがやられるし、ダッシュを吹かしすぎればあっという間に硬直が発生する。だからこそ「いかに立ち回るか」が重要になってくるバランスなのだ。

 他作品で比較するならば「Mechwarrior(メックウォーリア)」シリーズがかなり近い立ち位置である。もちろんそちらよりは機体の動作は軽快である。なお一部レビューに「ジャンプが出来ない」「高速移動が出来ない」などと書いてあるサイトがあるが、ゲーム中盤になればそれらをカバーする要素が装備として出てくる。単にそういった要素にありつけるまでプレイ出来ていないだけの話である。

ライフシミュレーションではなく、ストーリーテリング

 このゲームの要素を紹介する中で「農業」や「カスタマイズ」という単語が入ってくるが、いわゆるファーミングシミュレーター的な物やメカカスタマイズを期待するのは間違いだ。Steamのページには「水道と電気を引き、作物を育てて調理し、戦闘に備えて弾薬や燃料を精製し、動物を育てましょう。このボロ小屋も手を加えればより良い住居になります。」とあるが、これは説明としては間違っていない。

 その実態は、プレイヤーが水を汲んで与えるか、もしくは自動散水機を使い一定の日数を経過させる事で作物がインタラクト可能となり収穫できるプランターたちと、一日の始めに水ととうもろこしを与えて卵を生むのを待つ養鶏要素だ。もう一つストーリー終盤に解放される施設も、養殖場という言い方が一番近い。プレイヤーが毎朝水を汲んであげたりする必要があるものの、逆に言えば朝にそれだけしてしまえばほぼ良い要素である。これを「お手軽」と取るか「期待したものではない」と取るかは評価が分かれそうだが、少なくとも公式の説明通りではあるし、筆者としてはゲームシステムを過剰にしすぎてとっ散らかるよりはまともに思える作りだと感じている。


 料理要素についても色々とあるが、何も言わずに料理を作ってみて欲しい。このゲームの料理のイラストについてはどれもこれもが美味しそうであり、絶妙に「お腹が空く」タッチで描かれている。プレイ中に色々と食事をつまみたくなる筆者の気持ちがわかるはずだ。

 翻訳についてはまったく非の打ち所がない。スラングめいた言い回しも含めて日本語訳の完成度が非常に高く、ここまでインディーズゲームで翻訳の良いタイトルに巡り会える機会はそう無いものであり、力の入れようが伺えるというものだ。その翻訳精度が分かるのが、ストーリーを進める際の要所要所で入る、クレムによる日記を読み上げるシーンだ。純粋に朗読劇として彼女の心情が伺い知れるものとなっており、そしてどこまでも西部劇チックで擦れに擦れて乾ききった作中世界の実情も明らかになる。ストーリー後半でクレムによる料理の梱包と売却が出来る様になるが、その際に読み上げられる日記については相当に読み応えのあるものであることを保証しよう。

 カスタマイズについては、本作のラプターが完全チューニング式かつ唯一の量産規格であるため、パーツのカスタマイズといった要素は存在しない。内部に搭載する支援システムとしてダッシュや大盾、回復キットやジャンプユニット、高速移動ブースターなどをセットして出撃する。そのためロボットゲーによくある「パーツ換装」はないし、機体は量産機であるラプターMKⅡが最後まで愛機となるのだ。

 なおどうしても敵が倒せないという既に買ってしまったユーザーには、ショットガンの「ブルキャノン」や、火炎格闘武器の「フレイムガントレット」が効果的だ。特にフレイムガントレットは対ラプター戦に大いに活躍するため、手に入り次第ドリラーMKⅠなどの難敵に試してみよう。面白い様に焼きラプターが出来るはずだ。

ロードアウトまで難産であったBounty Star

 Bounty Starがリリースされたのは2025年10月23日だが、本作の公開予定は実は相当前であったことは余り知られていない。2023年発売予定であった本作は、パブリッシャーであるAnnapurna Interactiveが2023年6月30日に発売延期を発表。2024年に延期された後に、今回2025年10月のリリースとなっている。少なくとも2年半近い発売延期となっており、それだけにユーザーからの注目とある種の不安を集めていたのである。

 そして今回発売予定のメカ系ゲームという事で発表された事で、ある種「西部劇のような環境で、オープンワールドゲームの様に遊べるんじゃないか?農業要素とかも書いてあるし」と思ったユーザーも多いだろう。筆者もオープンワールドゲームかと思い購入したクチである。

 しかし蓋を開けてみれば、ミッション請負タイプのPhantasy Star Onlineの様な短時間のハンティングスタイルであり、ミッションそのものはサクサクこなせるし、料理は美味しそうで、農業はちょっと手間の掛かる一要素。愛機を駆って悪党をシバき回るマカロニ・ウエスタンなゲームであった。これは確かに宣伝の仕方に多少ミスがあったと思われなくもない。日本語版の公式サイトも、2023年発売というノーティスから更新を行っていないのだ。それでも、この手のタイトルが好きな人にはとことん好きになれるゲームだろう。それだけの魅力がこのゲームにはあるのだ。とはいえアイテム回収要素などの視認性が悪い感じではあるので、そこは今後に向けて改善される事を願いたい。

 自分のペースで地に足のついたロボアクションゲームをやってみたいと思った人は、迷わず手にとって欲しい一品。それがBounty Starだ。

Bounty Starのまとめ

長所
・熱管理システムなど、しっかりと腰を据えたプレイングをしたい人向け
・やや軽めのシンプルなミッション性ロボゲーを求める人には好相性
・独特の渋みのあるストーリーや設定など硬派な作風が好きな人にも合う

短所
・探索系要素やサブ目標はやや高難度で時間が掛かる
・一般的に期待されるロボットの快適さは序盤では無い
・シミュレータやカスタマイズ系の要素は手薄

Author
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尾崎 信也
1986年神奈川生まれ。ゲームニュースエディター。国内ニュースメディア複数社での記者・編集者を経験後、独立。ビデオゲーム業界の最新動向をメインに、ニッチな情報を含む幅広いトピックについて配信。