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大波乱のEscape from Tarkovと大躍進のEscape from Duckov、最早アヒルはおもちゃではない

11月15日、Battlestate Gamesよりかねてから期待されていた一作が正式リリースされた。ルートシューターとしてその名を轟かせた「Escape from Tarkov」である。探索要素に主軸を置いた同作は、限られた地点からの生存競争と脱出という要素を加えた「エクストラクション・シューティング」と呼ばれるジャンルに位置する。PvPvE要素としてのシューティングゲームのあり方を定義させた作品としても名高い同タイトルが、長い早期アクセス期間を経て正式版であるバージョン1.0として発売。Steam版では正式版のリリースを記念し、15%セール中とややお安い価格で提供されている。

 これだけ多くのユーザーが待ちわびた同作であるのだが、船出の直後から大嵐に襲われるとは誰が予想できただろうか。

サイレント修正とエラー対応の不誠実さ

 槍玉に上がる要素の一つは、チュートリアル報酬の修正だ。正式リリース版以降、チュートリアルを突破した際に貰える報酬は「LEDX」「グラフィックボード」「カスタムされたMPX(マガジンにはAP6.3が30発)」「空のMPXマガジン4本(本体含めると5本、本体は装填済み)」「鎮痛剤」「バンデージ(軽出血止め)」である。この中でLEDXとグラフィックボードについてはHIDEOUT/ハイドアウト(拠点)のアップグレードに欠かせないレアなアイテムとなっている。

 これだけであれば、それが手に入れられない初心者にも優しい仕様に思えるかもしれないが、実はそうではない。これについての大きな問題点が2つ存在するのである。

 一つは元々チュートリアルにおいて獲得した報酬が持ち帰れる様になっていたという点である。チュートリアル中に道中で拾う代物については、チュートリアル攻略後に持ち帰る事が可能であり、代わりに正式版以降の代物が自動入手となる事はなく、各自探索を重ねて持ち帰る事が出来るというバランスであった。特にLEDXとグラフィックボードは出現頻度が低い故に「苦境を乗り越えてアイテムを獲得し、無事に持ち帰って拠点をようやく増築出来る安堵感を得る」というゲーム体験を損なう物として批判されている。

 もう一つの点として、チュートリアル報酬の変更に伴う既存ユーザーに対する保証がまったく為されていない事である。チュートリアルで確実に獲得できるアイテムは新規にチュートリアルをクリアしたユーザーのみが獲得できる様に設定されており、正式版以前の早期アクセス段階でプレイを行っていたユーザーに対しては該当アイテムの配布などがされていないのである。もちろんハイドアウトを既にアップグレードしたユーザーであればそこまで影響は大きくないだろうが、未だそこまで到達できず、該当のアイテムを獲得できていない先行プレイヤーにしてみればひどく不公平に映るだろう。

 そしてこのアップデートもとい仕様変更については、アナウンス無しで突然行われている。早期アクセス時代からプレイしていた先行ユーザーからしてみれば、自分たちのプレイをないがしろにされた様なものだ。どう転んでも良い印象に映るアップデートではない。

 他にもゲーム本体そのものにまつわるトラブルも頻発している。マッチングの待機時間が非常に長かったり、あるいはユーザーがSteamアカウントと元々のアカウントデータを紐づけた場合にデータが消失したりするといった報告がレビューとして上がっている。またゲームランチャーの起動に関してもトラブルが起きている様子で、正式リリース後のサービスの品質が悪い事からSteamにおけるユーザーレビューは26%が好評の「やや不評」評価と非常に手厳しい。今後の品質改善が急務となっているが、期待されていたタイトルの船出としてはあまりに悪い状況だ。

300万本を超えるアヒルの群れ

 一方で文字通りのメガヒットを飛ばしているのが文字通りのタルコフライクである「Escape from Duckov」だ。同作はシングルプレイの脱出型シューティングゲームで、見下ろしタイプの視点でアヒルを操作しながら拠点をアップグレードさせて脱出目的を果たすというゲームである。タイトルからしてタルコフを意識している同作だが、その遊びやすさとキャラクターのキュートさなどの要素が見事噛み合って、発売直後に大きな話題を掻っ攫った。

 そしてこの度なんと300万本ダウンロードされたという告知を公式が行っている。なおこれは11月8日のデータであり、現在は更に本数を増やしているものと思われる。非公式データベースサイトのSteamDBによれば、アクティブユーザーが多い時間帯だとシングルプレイにも関わらず、8万人以上が同時にプレイを行っているとのデータが上がっている。なおタルコフについては倍以上の差をつけられており、3万6千人程のアクセスに留まっている。もちろんSteamからのデータではあるためこれがタルコフの同時プレイ人口のすべてではないだろうが、マルチプレイ前提のタイトルがシングルプレイのタイトルに大きく負けてしまっているのは黄色信号と呼んでも差し支えないだろう。何より、ダッコフについてはレビューが現在も96%好評となる「圧倒的に好評」のステータスを得ている事から、多くのユーザーが「楽しい」と思えるゲーム体験の提供に成功していると見ていい。

 本家本元がアヒルの群れに覆われてしまう前に、是非とも「脱出」を果たせる様な改良を望みたい所だ。

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尾崎 信也
1986年神奈川生まれ。ゲームニュースエディター。国内ニュースメディア複数社での記者・編集者を経験後、独立。ビデオゲーム業界の最新動向をメインに、ニッチな情報を含む幅広いトピックについて配信。