2025年10月13日午前3時から、21日午前3時までの間、ゲーム配信プラットフォームSteamにて「NEXTフェス」が開催されている。このフェスは近日登場予定の作品をまとめて特集し、体験版をユーザーにインストールしてもらう事で製品の事前認知を図るというイベントである。数多くの作品がインストールされているが、今回は剣と魔法のファンタジーをベースとした二作品「Of Ash and Steel」と「Panoptyca:Idle RPG Manager」を紹介しよう。
レトロかつ硬派なマーカーなしRPGのOf Ash and Steel
セルビアのデベロッパー「Fire & Frost」が手掛ける三人称視点のPC向けオープンワールドRPG「Of Ash and Steel」は2024年11月7日に発売とのアナウンスされた作品だ。今回のフェスでは体験版として物語の序盤がプレイ可能となっている。
本作最大の特徴はいわゆるクエストマーカーやエネミーマーカーが存在しないインターフェースにある。どういう事かと言えば文字通りの仕様で、敵に対しては目視で反応する他なく、クエスト目標についても特に何か目印があるわけではない。プレイヤーがお世話になるNPC「ネレイン」の言葉をそのまま引用するならば「何があっても、道から離れるな」という一言にすべてが詰まっている。

ゲームをスタートすると、本作は7つの島嶼国家「セブン王国」が舞台である事が説明される。かつて交易のあった島々が突如お互いに交易をやめてしまい、セブン王国のうち2つの島の国家は既に異変の只中にあるという。主人公である地図師トリスタンは、5つ目の島グレイシャフトに向かうために派遣された人物だ。早速上陸後船酔いで苦しみながらも、騎士団の管轄するキャンプで一夜を過ごす事になるというのが本作の導入だ。
この後紆余曲折あり、プレイヤーは世捨て人ネレインが暮らす小屋で世話になる。なお現状体験版の仕様として窃盗に類する要素が確認されていないため、中にあるものは基本プレイヤーの持ち物として取得する事が出来る。TESシリーズなどを既プレイの筆者としても取得に抵抗があったが、本作はそのあたりは優しい設計となっている。また、アイテムの制作要素のチュートリアルとして小屋内のアイテムで序盤向けの防具も制作可能だ。

小屋での仕事を終えて旅立ちの時がやってくるが、ここからがこのゲームの真骨頂とも言える部分である。まず主人公は飲まず食わずで居ると途端に弱体化してしまうため、定期的にキャンプで料理をし、食事を摂る必要がある。携行食は簡易的な回復アイテムとしても使用できるため、材料に余裕が出来ればある程度作っておくことが強く推奨される。また主人公は地図師というマッピング専門職ながら、このゲームはマップもマーカーもなく、右上に表示されるコンパス程度しか頼りに出来るものがない。自身の才能ではなく地形を記憶して、少しずつ捜索範囲を広げていくしかないのだ。

そして最大の問題点は、主人公が非戦闘員出身であるが故に非常に弱い事である。具体的には途中で拾える騎士向けの剣は筋力が足りずに持てず、木こりが使う斧も同様に持てない。鈍器扱いの欠けた剣は攻撃時のスタミナ消耗が激しい割に、隙が非常に大きくすぐに敵に先手を取られてやられてしまう。このゲームの戦闘バランスについてはSEKIRO辺りのゲームを参考にしているのか「敵の攻撃を回避して、自身の攻撃を差し込む」という手段が唯一有効な攻撃手段だ。
ここまで書くとおおよそ察する読者もいらっしゃるだろうが、少なくとも体験版終了時点で筆者の操るトリスタンは振りの速いナイフで敵をチクチクするだけのキャラクターとなってしまっていた。クラフト要素を含めて本作の魅力的な要素は、該当するNPCによるレクチャーが必須となるため、製品版になると解禁される可能性が大いにある。とはいえ全体的な難易度は高めであり、グレイシャフトにて会う人物の殆どが現状ろくでもない存在というすさんだ国家ぶりを見せている。作品のクオリティは相応に高いものと見られるので、気になるユーザーはチェックしてみるのも良いだろう。

完全放置で世界を探索するPANOPTYCA : Idle RPG Manager
Tesseract Studioが贈るPANOPTYCA : Idle RPG Managerは、非常にシンプルかつプレイしやすい「放置ゲーム」である。いわゆるダンジョン探索系ゲームをそのまま放置ゲームとして仕上げた様なテイストであり、プレイフィールとしては非常にやりやすいタイプのゲームである。

体験版で最初に作成できるのは、ヒューマン族のナイトのキャラクターだ。近接攻撃が得意なタイプであり、かなりの粘り強さを誇る職業だ。同キャラである程度ステージを攻略していくと、自動操作機能が解放される。これは自動でステージを進み、スキルを使用し、ボスを倒して周回を行うか次のステージへ進むかを選ぶ事が出来るのだ。
そしてまたしばらく進むと、2人目のキャラクターと「指揮モード」が解放される。これがこのゲームの最も特徴的な要素だ。2人目のエルフのアーチャーをアンロックすると、指揮モードで1人目のナイト、2人目のアーチャーの様子を「リアルタイムで」見ることが出来るようになる。これでゲームの下地がほぼ出揃った事になる。つまり普段は指揮モードを眺めつつ、時にステージを周回させたり所持アイテムを売り払ったりするという介入が必要になるシステムなのである。なお今後、2人同時出撃可能となるパーティーダンジョンコンテンツも実装予定との事だ。

本作品はボードゲームの様なシンプルなアイコンとグラフィックによるゲームであり、ゲームそのもののアクション性などはほぼ無い仕様だ。しかしのんびりとキャラクターを育成したいというユーザーにとっては魅力的な要素が前面に出ており、特に4キャラ×2画面の最大8キャラクターを同時育成可能というのは放置系ゲームとしては異例の大規模ぶりである。家事をしながら仕事をしながら、そんな合間にちょこっとキャラクターを育成し冒険をしたいと思うプレイヤーには、ぜひオススメの一作となるだろう。願わくは、もう少しキャラクターの種類が増える事を期待したい。
最終更新日: 2025年10月15日 15:08