トリッカルのサービス開始告知画像

「トリッカル・もちもちほっペ大作戦」が堅調な推移 三度目のサービスインとなる不死鳥のようなゆるかわゲーとは

 昨今多くのソーシャルゲームが生まれ、そして同時に消えていっている。ソーシャルゲーム市場においてはサービス開始後半年も保たずに終了するゲームもあれば、例えばにゃんこ大戦争やFate/Grand Orderの様な二桁年数のサービスを記録するタイトルも存在する。ユーザーの可処分時間を奪い合うとまで形容されるその市場において、重要視されるのは売上であり、評判であり、そしてサービスが継続する可能性である。

 ソーシャルゲームがサービスを終了する要因として、星のドラゴンクエストの様な「システム的な建て増しが困難となる」という都合的なものも存在する。また純粋に、コンテンツを継続して出せる様な人気が無くなってしまったタイトルが、サービス終了に至るというのもよくある話である。しかし早期に脱落するタイトルは得てしてシステムが未成熟であったり、あるいはゲーム性が浅かったり、キャラクターがユーザーを引き止める魅力を持っていなかったり、そういった諸々の要素でひっそりとサービスを終える。そしてそういうゲームはおおよそ二度と浮かんで来ない。

 だがしかし「3回目の復活で国からの賞をもらい、ある程度サービスが継続しているゲームが存在する」と聞いたらそれを本当だと信じられるだろうか?そんな嘘みたいな話を現実のものとしてしまっているのが「トリッカル・もちもちほっペ大作戦」だ。

トリッカル・もちもちほっペ大作戦ともちもちほっぺマニアの発生

 「トリッカル・もちもちほっペ大作戦」とは、Epid Gamesが開発しbilibiliが運営しているiOS/Android向けゲームアプリである。基本プレイは無料でアイテム課金制というスタイルを取っている。この作品は2023年に韓国にて配信された『トリッカルRe:Vive』というアプリのグローバル版としてリリースされたものであり、サービスインは2025年10月9日。東京ゲームショウ2025でもブースを出すなど、運営側であるbilibiliがかなりの予算を掛けて広告を行っている。

 このゲームの最大の特徴は「もちもちしたほっぺ」である。レビューサイトとしてあらかじめ断りを入れておくが、これは誇張表現でもなんでもない。このゲームに登場するキャラクターは皆可愛らしいデザインをしているが、ストーリーデモ中だろうがキャラクター選択画面であろうがロビー画面であろうが、色々な局面で撫でたり、くすぐったり、時にげんこつをお見舞いしたり、そしてほっぺをつねって引っ張る事が出来るのである。シリアス感のあるストーリーのど真ん中で、キャラクターがほっぺたをつねられて怒る描写のあるゲームがあるだろうか?少なくともこのゲーム程、キャラクターに干渉できるタイトルはそうないだろう。

 本作の戦闘システムは「オートチェス」と呼ばれる分類だ。これは戦闘パートなどを行う前にキャラクターを任意の位置に配置し、戦闘を繰り広げるというシステムである。プレイヤーが任意に介入可能なシステムも搭載されている為ブルーアーカイブの様なタイトルを思い浮かべる人もいるかもしれないが、最も近いのはラストオリジンの様なタイトルと思ってもらって良い。戦闘に入る前のスタンバイパートではキャラクターを強化したり、あるいは有利なスキルや装備を調達し、その直後に戦闘パートに入り半自動でキャラクターが戦う事になる。キャラクターの持つスキルはプレイヤーが任意で発動可能な他、オートプレイではキャラクターの持つ「SP」が満タンになった瞬間に発動される。

 そしてこのゲーム、先述した戦闘シーンもそうだがともかくキャラクターがよく動く。一人ひとり違ったモーションがあり、キャラクターの独自性を引き立てている。そのうえで各キャラクターの背景設定もしっかりしており、それらをひっくるめて非常に愛らしいキャラクター造形に成功しているといってもいい。もちろん性格が碌でもないキャラクターもいるが、それもまた愛らしさに変わるほどには造形の妙味が光るものである。

 キャラクターの魅力の高さがなせる業か、韓国ロッテの代表的お菓子「ペペロ」とのコラボレーションパッケージが実施されたり、3日間限定でコンビニエンスストア「Eマート24」の店舗をジャックするコラボレーションが行われている程には大人気である。韓国国内では勝利の女神:NIKKEやブルーアーカイブと人気を三分するタイトルとして挙げられているといえば、その注目度も分かるだろう。日本においても先日、秋葉原全域で「オリシナルクリアっアイル(原文ママ)」というオリジナルクリアファイルの限定配布を行うイベントが開催され、ヴィレッジヴァンガードとのコラボレーション規格も動いている程だ。

三度目の出発とdiyap氏の功績

 本作は元々2019年にRoll the Chessというオートチェスタイトルとして出発したゲームである。ベータテストを行った同作の評価は低かったものの、ユーザーからはゲーム内で見られる漫画を執筆しているdiyap氏のイラストは高い評価を得ていた。そこで運営側はキャラクターを刷新し、diyap氏をメインイラストレーターとして起用した作品「トリッカル」を配信する事とした。2020年6月に配信されたトリッカルは正式リリース直後、課金アイテムの購入時に決済ができない現象が発生。そういった経緯もありGoogle Playストアの評価は1.5点で低迷し、わずか2日でサービス終了、正式リリースを中断しオープンベータテストに切り替えた。その後しばらくしてオープンベータも終了し、二度目の死を迎えたのである。

 しかしここで開発企業であるEPID Games代表のハン・ヒョン氏は住宅を担保に融資を受けており、2025年に住宅を取り戻すことを目標としつつ、本作の開発を続行。各所へと資金調達の行脚に回り、なんとか命脈を繋いだのである。その甲斐もあり2022年に再度クローズドβテスト(CBT)を実施。戦闘システムとUIを大規模に刷新し、「Re:Vive(リバイブ)」を冠してタイトルを Trickcal Re:Vive(トリッカルRe:Vive) に改めた。その後2024年には大韓民国ゲーム大賞において「優秀賞」を受賞。グローバル版の提供も視野に入り、晴れてリリースと相成ったのである。

 diyap氏は既にEPID Gamesを退社しているが、日本においてはトリッカルのリリース前に寄稿されたラストオリジンの非公式コミックが日本のユーザーに人気であった事もあり「あのdiyap氏のテイストのキャラクターの作品が遊べるのか」とユーザーからは歓喜の声が上がったという点は押さえておきたいところだ。

 そしてゲーム内においては、キャラクターの1人であるバターがイベント中に怒りが頂点に達し「そして、新キャラがこれ以上登場しないように、トリッカルをサービス終了させてあげる。」とドスの効いた声で脅しつけるイベントシーンが出たり、ところどころに「以前サービスされていた作品」を思わせる痕跡が見え隠れするなど、不穏な気配をむしろネタに使うまでのしたたかさを発揮。これが日本のユーザーにとっては認知の起爆剤になり、その上で現在はゲーム内キャラクター「スピッキー」を題材としたミームが流行の兆しを見せ、トリッカルを知らない人でもスピッキーは知っているという人まで現れる程になっている。なおこの日本発のスピッキーブームを公式が逆輸入して、MAD動画を作成しているという始末である。

 果たして本ゲームの三度目の復活はどこまでサービスを継続できるか、もちもちしたほっぺが伸び続けるように長続きしてほしいものである。

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崎山 郁美
1996年兵庫生まれ。ゲームニュースエディター。国内エンタメメディアの編集者・記者を経て、独立。PCゲームやモバイルゲームの海外ニュースやトレンドを中心に日本の読者向けに発信中。